住宅ローン控除改正点まとめ

12月10日発表の税制改正大綱によって改正内容が明らかになりました。

税制改正大綱」とは翌年度以降の増減税、新税制案などの方針をまとめたもので、毎年与党が各省庁等の要望・提案に基づき議論し決定します。

概ね発表の通りまとまる事が多いことからニュースでも大きく取り上げられます。

現在の住宅ローン控除の仕組みは数年前から制度の歪みが指摘されていました、元々は住宅ローンの金利負担を軽減するために始まった制度にも関わらず、直近数年間の金融機関の住宅ローン金利は1%を下回っており住宅ローンを利用することで、得をしてしまう逆ザヤ状態に陥っていました。それにより住宅ローン借入額を必要がないのに増やしたり、繰上返済をあえてしない動機になったりと改善が求められてきました。住宅ローン減税については2021年の税制改正大綱でも既にふれていて、会計検査院からの指摘を踏まえ住宅ローン年末残高の1%を控除する仕組みについて1%を上限に支払い利息額を考慮して控除額を設定するなど控除額や控除率のあり方を「2022年度税制改正大綱」において見直すものとする、と改正に向けて本腰を入れていく予告とも取れる発表をしていました。

主な改正点

以前からの会計検査院の指摘に対応する観点から、制度の簡素性も踏まえ控除率を0.7%とする、逆ザヤ解消に対応した形にはなったが、1%を上限に支払利息額を考慮して控除額を設定する去年の予告部分に対しては全く行われませんでした。控除期間延長にする事により印象づけてはいるが、方々に気を使った結果、中途半端な改正になる印象をうけます。

 

具体的な改正点

控除率を1%から0.7%に下げた理由は逆ザヤの是正ですが、金利以上には考慮しないと言いながらも「制度の簡素性を踏まえ」という観点から物件毎に控除率を変えることで年末調整等の複雑な処理を簡素化する狙いがあったのではないか?と考察します。
控除期間を新築13年、既存住宅(中古住宅)10年に延ばした理由は単純に国民消費者への配慮しつつ前年までの制度の不公平感を無くし。新築市場は冷えさせたくない!という狙いがあるものと考察する。限度額:省エネ基準を満たさない住宅は3,000万円、コレちょっと意図が読めませんがココに関しては単なる増税です、何かの帳尻合わせでしょうか?
しかし新築になると必要となる部品や業種が多様になるのでそのぶん関わる企業が増えますので建築業界及び新築需要を絶対に冷え込ませないための対策が伺えます。
それゆえ今回の改正は全体的にみると長期優良住宅等の高性能住宅を受注する大手ハウスメ―カーなどにはまったくと言っていいほど影響がないような形になるのではないでしょうか?
しかし長期優良住宅の認定実績が80%を超えているとしていますが、私が今年販売した数十件の分譲住宅に限って言えば長期優良住宅に該当するものは0件ですので、これらは注文住宅でハウスメーカーが受注し建築した物件にのみ該当するように思えます。
引用:国土交通省 認定基準の見直し検討の参考資料より
今回行われた所得制限につては、3,000万円/年→2,000万円/年に下げられた理由は、高所得層を狙い撃ちした増税と確定申告による税の抜け穴対策となりますが、もともと3,000万円という所得はかなり高額でしたので個人事業主や経営者の場合ですと確定申告で操作できそうなものですので現行の所得上限はあまり意味をなさなかったと想像します。
このような高額所得者はそもそもゆとりがあるので文句も出ない形で纏まったのだと推測します。
今年度の方が得 それほど変わらない方 来年度のほうが得
中古住宅

省エネ対象外住宅

高所得層

ペアローン利用者

扶養家族が少ない方

平均所得層

利用するローンが少額の方

築住宅・高額の融資利用者

長期優良住宅・ZEH・低炭素住宅

平均所得層・扶養家族が多い方

単独ローンを利用する方

ふるさと納税を活用している方

※あくまで傾向です

ただし現行の適用を受けようとして今から探しても現実的には難しいので、来年度の改正を見越してどのように対策し購入計画をしていくかを考えたほうが建設的だと思います。

 

家 買代さん
でも実質増税だし、来年度のほうが得する人って一部でしょ?損した気分なんですけど

家を売るオトコ
そうですね、ザックリな例ですが来年度のほうが得する人は年収約650万以上(夫婦+子供2人)一般給与取得者の方が5000万ほどの住宅ローンを利用するケースの方だと現行より得します。
来年度は得する方・そうでない方がハッキリ分かれる形となります
では人生と同じで、後ろ向きではなく前向きにこのように考えてみるのはどうでしょう?

 

上記の2500万円借入場合で、金利0.45%35年固定・返済元利均等返済・住宅ローン控除が終了後の14年目に100万円の繰上返済(期間短縮)した場合に、本来、住宅ローン控除の趣旨である金利負担の軽減を観点にみてみましょう!
※返済開始は施行が開始される4月から算出してみます。
●35年間(繰上返済なし)で完済した場合
 総支払額:¥27,015,810−   内利息支払額:¥2,015,810−
●14年目に100万円繰上返済(期間短縮を選択)した場合
 総支払額:¥26,916,080−   内利息支払額:¥1,916,080−
 しかし期間短縮を選択したので、35年(420回)返済が、403回目で終了
このように、繰上返済したことにより総支払利息は約10万円節約できて返済期間も1年5ヶ月短縮できます。
改正後の住宅ローン控除でも約190万の利息の内、約180万円分の利息軽減の恩恵をうける事により、実質2500万円もの借入が利息が約10万円の負担で済むことになります。
家を売るオトコ
コレって、損したといえるのでしょうか?
確かに現行税制の歪みにより得した方も多いですが、それは単なるラッキーにすぎません。
以上 「税制大綱の改正点まとめ」でした、皆様の不動産取引の一助になれば幸いです。
記事内容は確約できるものではありません、正確な税額を算出しようとした場合、年収・勤務形態・収入の上がり幅・扶養家族・育休の取得有無・物件価格や建物詳細・ふるさと納税状況など様々な情報が必要です。また私のような税理士資格を持ち合わせていない一個人が税務相談に応じ損得を明言することは違法行為にあたりますので、本記事は改正点について噛み砕いた一般論をご紹介したものですのでご了承ください。正確な税額をおしりになりたい場合は、税理士にご相談いただくようお願いいたします。
税制改正要望内容については総務省の各省庁要望よりご確認ください。
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